都立中の適性検査は各校で意外と違う!のですね
都立中高一貫校 各校の適性検査の特徴は?
都立中高一貫校の入試は「適性検査」と呼ばれます。単純な計算やパターン化された特殊算ではなく、数百文字を超える記述や長文にわたる資料の読みこなしが必要となる科目横断型の問題であることが大きな特徴です。
読解力と表現力が適性検査のポイント
適性検査でしっかり得点するには、小学校で学習する基礎的な学力はもちろんですが、文章・会話・資料を正しく読み取って整理する読解力と、文章で解答を作成する表現力が必要。適性検査独特の出題形式・解答方法に慣れ、幅広いテーマの問題演習を重ねていく必要があります。
都立中学の適性検査は、共同作成問題と独自問題
上に挙げたような特徴は都立中に共通するものですが、各校それぞれの価値観を反映させるため、適性検査の問題は、東京都が共同で作成した問題と各校で独自に作成した問題との組合せにより実施されています。
都立中学の適性検査 = 共同作成問題 + 独自問題
共同作成問題
共同作成問題は次の2種類に大別されます。ざっくり言うと、適性検査Ⅰは国語っぽい問題、適性検査Ⅱは算数っぽい問題です。
- 適性検査Ⅰ:与えられた文章をもとに、的確でまとまりのある文章を書く力をみる
- 適性検査Ⅱ:与えられた資料を基に、課題を発見し解決する力をみる
都立中の共同作成問題、適性検査Ⅰのポイント
都立中の共同作成問題の適性検査Ⅰでは、2つの文章が出題。文章は2つありますが、共通のテーマを持った内容です。常識からの自由(2017年度)、読書(2016年度)、人に伝える(2015年度)などのテーマが選ばれています。
それらの内容を的確に読み取り、自分の考えを論理的かつ適切に表現する力が問われます。
文章の内容をふまえて筆者の主張などを30字程度でまとめる記述の問題が2題と、2つの文章をふまえて自分自身の体験や考えをまとめる作文(400~440字)が出題されます。
配点は読解問題が40%、作文が60%となっています。
都立中の共同作成問題、適性検査Ⅱのポイント
都立中の共同作成問題の適性検査Ⅱは大問3つからなり、それぞれがおおむね算数・社会・理科に該当。大問ごとに小問が3〜4題と、問題数は他県の適性検査問題と比べても少ないのです、数ページにわたる長い会話文や複数の資料を正確に把握し、設問の条件通りに解答することが求められる。「時間が足りない」試験だと言われます。
2015年度
- (算数) 速さの考え方を利用した天体の公転に関する問題
- (社会) グラフを分析する問題・地図と地球儀について考える問題
- (理科) さまざまな形の立体を水中にしずめる実験に関する問題
2016年度
- (算数) 渋滞の起きる仕組みを元に、条件整理と速さを融合させた問題
- (社会) 歴史や地理を題材にした資料を読み取り答える問題
- (理科) アゲハの幼虫やさなぎに関する実験考察の問題
2017年度
- (算数) 立体図形から論理、規則性と様々なジャンルを融合させた問題
- (社会) 野菜の生産量などの図表から読み取り答える問題
- (理科) プラスチック球で作った砂時計についての実験考察の問題
独自作成問題
各校の特色に応じて各校で作成する独自問題ですが、これは大きく分けて2パターン。適性検査Ⅲという大きな塊を実施する都立中と、適性検査ⅠとⅡの共同作成問題の一部を、独自の問題に差し替える都立中があるのです。
- 適性検査のⅠ・Ⅱの全4問のうち1問又は2問を差し替える
- 適性検査Ⅲの実施
ちなみに、どの都立中も、何らかの形で独自問題を出題していますので、共同作成問題だけで適性検査を行う学校はありません。
また、適性検査Ⅲを行う学校の場合、適性検査Ⅰと適性検査Ⅱの差し替えは1問以内とされています。
適性検査Ⅲを出題する都立中
- 小石川
- 武蔵
- 両国
- 富士
- 大泉
- 白鷗
適性検査のⅠ・Ⅱ(の一部)を差し替える都立中
- 桜修館
- 南多摩
- 立川国際
- 三鷹
その他:すべてが独自問題
- 区立九段
都立中の出題傾向
都立 小石川の適性検査の出題傾向
適性検査Ⅱの一部が独自問題(計算力が要求される社会の問題)であるほか、適性検査Ⅲとして理数的な力を測る問題が出題されます。
適性検査Ⅲでは「なぜ、鮭は生まれた川に戻るのか?」「なぜ、色鉛筆は普通の鉛筆より消しづらいのか?」などが出題。科学的な態度を持つ生徒を望む姿勢が見て取れます。
小石川は報告書 25%、適性検査Ⅰ 25%、適性検査Ⅱ 25%、適性検査Ⅲ 25%の割合で総合得点がきまります。配点比率が均等なことから、すべての問題に対応できる力が必要です。
また、都立 小石川のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 豊かな感性、主体性や創造性など、リーダーに求められる資質・能力をみる
- 思考力や判断力、表現力等、小学校での教育で身に付けた総合的な力をみる
都立 白鷗の適性検査の出題傾向
適性検査ⅠとⅢが独自問題。適性検査Ⅲは平成30年の入試から追加されましたが、かなり算数色の強いものでした。
白鷗の適性検査Ⅰで必要とされる力は「記述力」。要旨の読み取りでは100字の記述が2題。そして作文では400字と、膨大な記述量が要求されます。
都立白鷗は報告書 20%、適性検査Ⅰ 30%、適性検査Ⅱ 30%、適性検査Ⅲ 20%の割合で総合得点が決まります。独自問題の割合が総合得点の50%を占めますのでしっかりとした独自問題対策が必要です。
また、都立 白鷗のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 小学校等で学習した内容を基にして、思考・判断・表現する力をみる
- 与えられた課題を解決するための、分析・考察する力をみる
- 身近な事象の中から課題を発見し、それを解決するための方法を考えることを通して、思考・ 判断する力や自分の意見を適切に表現する力をみる
都立 両国の適性検査の出題傾向
適性検査Ⅰが独自作成問題。また、独自作成問題である適性検査Ⅲも実施されます。
適性検査Ⅰでは、2つの文章が与えられ、3〜4題の読解問題と、400字程度の作文が出題。配点は読解問題が40%、作文が60%です。読解問題は20字程度から60字程度と他校の出題と比べ、短い字数で答える問題が多いのが特徴です。作文は文章の内容をふまえた条件のある作文が出題されます。比較的オーソドックスな内容だといえます。
適性検査Ⅲは30分という短い検査時間が特徴。毎年、小問が5題出題がされます。教科は算数や理科が中心で、短時間で会話や資料を読み取る読解力、与えられた条件を素早く整理する力が求められます。
都立両国は報告書 20%、適性検査Ⅰ 30%、適性検査Ⅱ 20%、適性検査Ⅲ 30%の割合で総合得点が決まります。独自問題の割合が総合得点の60%を占めるため、きちんと対策を行うことが重要です。
また、都立 両国のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 文章を読み取り、読み取った内容をふまえて自分の考えを分かりやすく文章にまとめ、効果的に他者へ伝える力をみる
- 提示された課題を理解し、解決するための方策を考え実践する力をみる
- 今までに学習した内容を基にして、分析、考察し、表現する力をみる
- 身近な社会生活の中から課題を見出し、思考、判断する力や社会への関心の程度をみる
都立 桜修館の適性検査の出題傾向
適性検査Ⅰが特徴的なのが桜修館。ものすごく短い文章や資料から感じたことを400文字〜600文字でまとめる問題が出ます。出題者の意図を正確に読み取る力が必要になります。
適性検査Ⅱの大問3つのうちの一つも独自問題です。算数に特化した問題が出題されます。問題文が長く必要な条件を抽出し、問われていることを正確に答えていくことが求められます。細かな計算力が必要になってくる問題が多いことが特徴です(1.45 × 1.45 × 3.14といった、桁数の多い計算問題など)。
桜修館は報告書 30%、適性検査Ⅰ 20%、適性検査Ⅱ 50%の割合で総合得点が決まります。適性検査Ⅰと適性検査Ⅱの大問1で独自問題を出題します。適性検査Ⅱの割合が50%と半分を占めるのが特徴です。
また、都立 桜修館のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 小学校で学習した内容を基にして、思考・判断・表現する力をみる
- 与えられた課題の条件を整理し、論理的に筋道を立てて考える力をみる
- 身近な生活を題材としてその中にある課題を自分の経験や知識で分析し、考えや意見を的確に表現する力をみる
- 適性検査Ⅰについては、(1)〜(3)に加え、意欲的な態度をみる
都立 富士の適性検査の出題傾向
適性検査ⅠとⅡは共同作成問題。適性検査Ⅲとして出題される独自問題は、かなり算数色の強い問題です。
過去には、サッカーのリーグ戦のしくみ、ボードゲームのルール、図形の組み合わせの問題、立方体の展開などが出題されています。古典的なゲームの中で培われる「ルールの読み取り」「立体の理解」が鍵です。
また、都立 富士のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 与えられた文章を深く読み取り、内容を適切に把握し、自分の考えや感じたことを表現する力をみる
- 小学校で学習した内容や生活体験を基にして、思考・判断する力をみる
- 資料や様々な条件を基に課題を見出したり、課題解決したりする力をみるとともに、分かりやすく説明する力をみる
都立 大泉の適性検査の出題傾向
適性検査ⅠとⅡは共同作成問題。適性検査Ⅲは算数・理科の分野から出題される独自作成問題です。
適性検査Ⅲでは「数理的処理の力」「図形処理能力」が問われます。数理的処理の問題では、複雑な条件を整理し、かつ正確に計算をする力が必須。また、図形問題では複雑な空間図形の展開図など、非常に高度な「空間把握力」が必要とされます。
都立大泉は報告書 20%、適性検査Ⅰ 20%、適性検査Ⅱ 30%、適性検査Ⅲ 30%の割合で総合得点が決まります。共同作成問題と独自問題の両方をバランスよく対策する必要があります。
また、都立 大泉のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 小学校における学習内容に関連させて、与えられた課題に対する思考力と判断力をみる
- 日常生活や自然界に起きる出来事の中に課題を見出し、論理的に考え、解決する総合的な力をみる
- 自己の考えを相手に分かりやすく表現する力をみる
都立 南多摩の適性検査の出題傾向
適性検査Ⅰが独自問題。適性検査Ⅱは共同作成問題です。
適性検査Ⅰで出題される文章は1500文字程度と他よりもやや短め。60〜80文字程度の記述と(問題1、問題2)、問題3として本文の内容を踏まえた作文が出題されるのが特徴です。400字〜500字の比較的長い文章で、自分の意見をまとめることが要求されます。
また、南多摩のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 文章を深く読み、その内容を的確にとらえた上で、自己の思考や判断を加え、論理的に説明する力をみる
- 資料を活用して自らの考えを導き出し、効果的に表現する力をみる
- 物事を多面的にとらえ、様々な考えを広く受け入れた上で、よりよく解決するための方法を見出す力をみる
都立 立川国際の適性検査の出題傾向
適性検査Ⅰが独自問題。適性検査Ⅱは共同作成問題です。
立川国際の適性検査Ⅰは、文章が1つで、およそ2,500字程度です。出題は内容について部分要約や説明をする問題が2題と、400~600文字程度の作文。難解な用語に抵抗感を感じない「語彙力」、問題で示される条件を「正確に把握する力」が必要です。
報告書 20%、適性検査Ⅰ 30%、適性検査Ⅱ 50%の割合で総合得点が決まります。共同作成問題である適性検査Ⅱの割合が50%と高いため、共同作成問題と独自問題の両方をバランスよく対策する必要があります。
また、立川国際のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 資料の内容を読み取り、その中から必要な情報を集め、分析する力をみる
- 課題を的確に理解し、論理的に考察・処理する力をみる
- 自己の考えや言葉の意味などを、相手に分かりやすく伝える表現力をみる
都立 武蔵の適性検査の出題傾向
適性検査Ⅲとして独自問題を出題。大問2問で構成されます。図形の問題がよく出ます。一時期はとても難しいと評判だったのですが、最近はやや易化している印象も。
適性検査Ⅱも、大問の一つが独自問題です。会話文、グラフ・図表から設問で求められていることを読み取り、記述する問題。設問が非常に長く、回答の条件が細かく指定されていることが特徴です。テーマも「消費者の求める安全な食品」「光が環境に与える影響」「多摩地域における水車の利用」と多岐にわたります。
報告書 25%、適性検査Ⅰ 25%、適性検査Ⅱ 25%、適性検査Ⅲ 25%の割合で総合得点が決まります。配点比率が均等なことから、すべての問題に対応できる力が必要です。
また、都立武蔵のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 文章を深く読み取る力、自分の考えを論理的に文章で表現する力等をみる
- 資料を分析し考察する力、資料の読み取りに基づいた論理的な思考力、表現力をみる
- 数理的な分析を行い、総合的に考察する力や問題を解決する力、リーダーとして計画する力等をみる
都立 三鷹の適性検査の出題傾向
適性検査I(1問中の1問)と適性検査IIの一部(3問中の1問)が都立三鷹のオリジナル問題(独自問題)になっています。
適性検査Ⅰは、2つの文章を読み、それぞれの文章に対して問題が2問ずつ(問題1から問題4)出題されるという形式。作文の字数制限が160〜180文字と比較的短いことが特徴ですが「短すぎて書きたいことがうまくまとめられない」「内容が薄くなってしまう」ということもあるので注意。短いから簡単、というわけではありません。
適性検査のⅡの独自問題は、大問1(算数)として出題されることが多いです。小問ごとに独立したテーマから出題されていることが多く、難易度にもばらつきがあります。「解くべき問題を見極める力」が必要です。
報告書 20%、適性検査Ⅰ 30%、適性検査Ⅱ 50%の割合で総合得点が決まります。適性検査Ⅱの割合が50%と高いため、共同作成問題と独自問題の両方をバランスよく対策する必要があります。
また、都立三鷹のWebサイトには、出題の方針として次のような文章が掲出されています。
- 文章を深く読み取り、社会的リーダーとして必要な、他者の心情を理解する力、自分の考えを効果的に伝える力をみる
- 課題や資料の内容を正しく分析する力、論理的な思考力・判断力及び問題を解決していく力をみる
区立九段の適性検査の出題傾向
厳密には都立中ではありませんが、ここでは、区立九段についても同様に紹介します。
区立九段は東京都の教育委員会が直接管轄する学校ではないため、予算、採用、試験などが独自運営。適性検査も、すべての問題が独自問題となります。
区立九段は報告書 20%、適性検査1 20%、適性検査2 30%、適性検査3 30%の割合で総合得点が決まります。
適性検査1:過去には放送問題が出題された年もありますが、過去3年間は小説文が1つ、論説文が1つの形式でした。設問は、それぞれの文章に対し空欄補充や短文記述の出題が3題程度。これにくわえて50~60字の作文と、200字程度の作文が出題されています。
適性検査2・適性検査3:出題内容に大きな傾向や特徴がないことが九段の最大の特徴。算数がやや多めの出題ですが、理科・社会の他、家庭科や時事問題までさまざまなジャンルから出題されます。資料分析や図形の問題など典型的な問題も多く出題される一方で、コンパスを使った作図など、一風変わった問題が出ることもあります。
都立中の適性検査 過去問のダウンロード
適性検査の内容は、各校のWebサイトからダウンロードすることができます。適性検査Ⅰの文章などは掲載期限が決まっている場合もありますのでご注意ください。